プランク・ゼロ / スティーブン・バクスター
プランク・ゼロ (ハヤカワ文庫 SF―ジーリー・クロニクル (1427))
- 作者: スティーヴン・バクスター,古沢嘉通
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2002/12
- メディア: 文庫
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僕がバクスターを読み始めたころには未訳で、他の長編の解説に「この短編集によって、各長編のそれぞれにひそむ謎や背景が説き明かされている」といったように書かれていて、うわー早く訳されないかなーと思っていた。気が付いたらどうやら2002年に訳されていたようだ。いまごろ気づいて読み。
たしかに「それぞれにひそむ謎」が説き明かされていて興味深く読んだのだけど、単純に読み物としては物足りないなあ。
バクスターって「重力定数が十億倍の宇宙に人類の末裔が住んだらどうなるだろう?」とか「中性子星の表面に体長10ミクロンの人類を移住させたらどうなるだろう?」っていうような、魅力的なシチュエーションをまず構築し、その「どうなるだろう?」をシミュレーションして、ディティールをこれでもかと言わん限りに粘着質に書き込んで行くのが魅力の作家だったんだなあと、つくづく思った。
ル・ヴィンみたいに、純粋な物語巧者が、SF設定をうまく生かしているというような作家ではないので、短編になると一気に魅力が激減する。バクスターの粘着質という美質が伝わらなくなる。
少なくともこの短編集からバクスターを読み始めるのは勧められない。
しかしつくづく思うのが、バクスターってもうちょっと固有名詞類を考えてつけて欲しいものだ。「ナイトファイター」やら「スターブレイカー」やら「エキゾチック物質」やら、超安物スペースオペラでもつけないようなネーミング、ほんと萎えるんですけど。