旧甲州街道 鳥沢〜上野原 徒歩
先週の12日に、足がクタクタになるくらい疲れてみたくて高尾山口〜相模湖と歩いてみたのだが、意外にたいしたことがなくてガッカリしたのだった。結局、翌日以降も筋肉痛とかほとんど出なかった。
そこで今回は、駅で言えば中央線の鳥沢〜上野原間を結ぶ、旧甲州街道を踏破してみようと考えた。
中央高速と並行して走っている県道30号、大月上野原線だ。
つげ義春の漫画の舞台にしばしばなっていた街道らしい。
さて13:28に鳥沢駅を出発だ。この駅の入口で、いきなりなかなかイイネタを発見してしまった。
新聞の自動販売機、その名もニュースくんだ。…いやはやなんともストレートなネーミングだ。妙にかわいらしい名前の割には、筆文字っぽい妙に格調高げなフォントであるのがいい味を出している。
13:50中央道と交差するあたりの地点で、なにやら怪しげな廃屋があった。
歩き始めてまだ20分ちょっとしか経っていないのだが、さっそく寄り道して観察してしまった。こういうのを見逃すわけには行かないんだよね…。
窓を割ったのはもちろん僕じゃないですよ!
いったいなんだったんだろうこの建物は? うっかり写真を撮り忘れてしまったが、玄関に捨ててあった新聞は2000年の1月だった。中央道の工事の人の寮とかだったのかな? でもその割には仮住まい感が少ないし…。
14:22。中央道を通り抜けて、延々とゆるい上り坂を登っていきます。山間の畑と、民家がポツポツといった状態なのだけど、なかなかイイ看板を発見しました。
この写真だと判別できないけど、カラー看板なのになぜかモノクロのこの人物はなべおさみであったのだ。カラーでなべさんを出してやってもいいじゃないかよ…。
15:15。そろそろ見晴らしのよい標高になってきた。登りが続いているので体は火照っているが、体力はまだまだ全然余裕。
この盛り上がりは、一見してゴミの山っぽいのだが、一里塚というものだ。
「甲州街道で、日本橋から二十一里(82.4km)・20番目のものです」とのことだった。
15:42。さて、つげ義春の漫画の舞台にだったという、犬目宿と言う宿場にさしかかりました。
今まで山道ばかりだったので、ようやく人心地ついた感じ。ひとまず自販機でコーヒーを飲む。
しかしいつまで経っても温泉街っぽい雰囲気にはならない。普通の民家が並んでいる集落って感じなんだが…。
あれれ?!と思っているうちに、また山道に入ってしまった。宿場は裏道に入ったほうだったのかな。もうちょっと調べておけばよかった。ちょっとガッカリ。
16:05。眼下に見慣れた談合坂サービスエリアを発見した。
16:31。中央道の上を越えていくと、右手に談合坂サービスエリアが見える。柵を越えて忍び込んで、トイレと食い物にありつこうと考えていたのだが、別に柵を越えなくても、徒歩の人は普通に外部から入れるのだった。
それで談合坂サービスエリアって、あんなにいつも混んでいたのか。なるほど。
これもまた今日はじめて知ったのだが、このサービスエリアにはヘリポートがあった。
いままで寂れた山道を、ひとりとぼとぼ歩いていたのに、いきなり人の群れに入ってしまったので、なんだか人酔いしてしまう。
どうも昔から人の群れが苦手で仕方が無いのだが、山道を歩いていた直後だったのでなおさらテンションが下がってしまう。メシでも食っていこうかと思っていたのだが、すごい人ごみに気圧されてしまって、談合坂団子5本パック550円を買って、座って休みもせずに歩きながら食べつつ、旧甲州街道踏破に戻る。
17:12。ここで地図を見る限りではちょうど道半ばなのだが、もうかなり日が暮れてきてしまった。
この分だと、上野原に着くのは19時を過ぎるのは確実だろう。明かりがろくにないであろう山道を歩くのはいかがなものか、このあたりであきらめて南下して四方津駅を目指すという選択肢もある。ここを通り過ぎてしまったら、あとはもう上野原駅まで暗い中を行くしかない、どうしようか?
と一瞬迷ったのだが、やはり初志貫徹してこのまま踏破を続けることにする。
17:40。そろそろ写真を撮るにはきびしい暗さになってきた。
18:03。日が暮れるのは早い。空にはかろうじて光が残っているけど、道はもうすっかり暗い。街灯が頼りだ。
18:13。わずか10分の間に、すっかり暗くなってしまった。
このあたりは、街灯すらまばらで、道路の白線がようやく見えるというくらいだ。時々車が通るとほっとする。
しかし、ここに至っても未だにあまり疲れたって感じがない。足の脛がちょっと張っている感じがするけど、そのくらいだ。犬目宿を過ぎてからはほとんど下り坂だから、距離は歩いても腰に負担があまり来ないからだろう。
ちょこちょこ写真を撮るために立ち止まってはいるけれど、談合坂でも結局ノンストップだったし、出発してから腰を下ろす休憩すら一度も取っていない。けど疲労はあまり感じていない。おれってまだまだ体力あるもんだなと安心する。
疲労よりもむしろ、退屈がなんといっても大敵だ。街灯がほとんどないような暗い山道を、延々と歩いていくだけ。バイクや車なら運転の緊張感があるが、徒歩だとほとんど緊張しないし、景色も真っ暗で全然見えないし…。単調にもほどがある。携帯ラジオとかでも持ってくればよかったよ。
すっかり飽きたなあ、さっき時計を見てからもう1時間くらい経った?と思って時計を見ると、まだ15分しか経っていなかったりする。
退屈は本当に嫌いで嫌いで仕方が無い。知恵熱が出るほどに仕事が詰まってヒーヒー言うのも嫌いで嫌いで仕方が無いが、それよりも退屈や単調のほうがずっとイヤなんだ。精神的にキツいことがあっても、退屈や単調でないなら、まだそのほうがマシなんだなあと考えてしまう。
真っ暗な山道をとぼとぼ歩きつつ、しかし俺いったいイイ年をして何やってるんだろう、と、ふと我に返ってしまう。なんでこう、いつまで経っても、こんなくだらないことを嬉々として計画して実行してしまうんだろう、なんでこう、大人らしい行動を取れるようにならないんだろう、ああほんとうにイヤだなあ、と自己嫌悪に至ってしまう。
こういうときに自分に酔って、こんなダメな自分ってもしかしてカッコいい?とか思っちゃえるような性格だったら、まだそのほうがよかったのかもな、などと、いらぬ事まで考えてしまう。
やはり退屈っていうのはろくなことがないですね。