東北横断

さて小名浜の宿を出発して、少々道に迷いつつも三崎公園に到着だ。この太平洋側の海岸から、なるべく夕暮れ時に、新潟県日本海側の海岸に到達しようという計画なのだ。


8:45に三崎公園を出発して、国道6号→国道289号に乗る。この道をメインにして、東北を横断する計画だ。このあたりでは、桜が散り始めて、半分ほど花が残っているといった状態だった。

 

国道が棚倉市街地に近づいてきたため、それを避けるために県道60号に移ることにする。この県道には、地図の解説によれば「戸中峠 桜並木の峠 見頃は4月下旬」とのことで、先ほどの様子なら、まだ桜が残っているだろうと期待したのだ。

 

しかし残念ながら、こちらの道のほうが日当たりがよいためか、かなり花は散ってしまっている状態だった。

次に県道76号に乗って北上し、やはり白河市市街地を避けるために、周辺の県道で迂回していく。マピオンの1/15万表示では出ないような県道だが、道幅も十分で整備もゆきとどいていた。

ここで国道289号に戻る。地図を見ると、この地点に「追原庵 白河そばの中でも幻といわれた追原そば」などとある。こりゃー食べないわけにはいかないわい。さっそく向かうことにする。


このようにプレハブの建物であった。この店は地元の生産組合が、地元のそば粉100%でやっている店だ。店の外観といい、セールスポイントといい、経営形態といい、長野県塩尻市の本山そばを思い出すなあ。
内部はパッと見、地元の人の集会所って感じだ。メニューももりそばとざるそばの2種類(大盛りあり)だけ。


さっそく食してみると、これはかなりうまいです。むちむち系の食感はやっぱり東北系で、どちらかといえば丸めな味も東北系だ。なんといってもそばの風味がたまらない。素朴だけど濃厚なそばの香りと味。つゆはクセがなく、かなりシンプルなものっぽい。少なくともシンプルに感じさせようという志向を持っていて、それが蕎麦の素朴さと相性がよい。
でも僕の好みだと、もうちょっとだけ塩辛くてもいいかな。蕎麦湯もうまかった。うまい蕎麦は100%蕎麦湯もうまい。蕎麦はいまいちだったのになぜか蕎麦湯がうまかったことは何度かあるんだけど。それにしてもここはおすすめだ。

さてこのまま国道289号を東に向かうと、甲子峠で道は工事中になり、途切れてしまう。鎌房林道・甲子林道という2本のダートをつないでいけば甲子峠を越えられるっぽいのだが、今回は夕暮れまでに日本海側にいこうという目的があるし、地図の解説によれば「西部林道より先は大荒れ」らしいので、冒険はしないで、県道37号に迂回する。羽鳥湖に向かう道だ。

羽鳥湖で国道118号、湯野上温泉で国道121号に乗り換え、東に向かう。地図の解説にによれば、湯野上温泉は「河原にある無料の混浴露天風呂」らしいのだが、河原でしかも混浴ってすごいね。丸見えじゃん。腹筋が割れていた時代だったら入っていたかもしれないが今はやめておこう。

国道121から、289、400と3分岐するポイントがあるのだが、地図を見る分には、この国道289号、あまりにも淡々とした道で、あんまり走っていても面白くなさそうだ。もっとせせこましくて、言うたらめちゃクネな道じゃないとね。飽きちゃうよ。そんなわけで、国道400号に乗って北上する。
この辺りは、残雪もそうとう残っております。


案の定、こちらは、めちゃクネ道が多く、なかなか満足できた。これはめちゃクネ道を延々と登り、峠の頂上から見たところ。


さて迂回していた国道289号に戻ります。このあたりはいまがまさに桜が満開だった。



国道289に沿って流れる伊南川沿いの堤防には、桜が延々と植えられていた。

国道289号は、この八十里越えというところで、また工事中で途切れてしまう。なので国道252→国道290と迂回し、下田でまた国道289に戻ってからは、新潟県の弥彦に向けてラストスパート!…するつもりだった。
ところがこの国道252号の分岐点のところにあるガソリンスタンドで聞いた情報によれば、国道252号の只見方面は雪で交通不能だそうなのだ。ohなんてこったい。
しかたなく、国道252号を東(沼沢湖方面)に向かい、その後国道400号→国道49号と大迂回をするしか手は残されていない。とほほ。これじゃ夕暮れまでに日本海なんて相当難しいだろ。ていうか無理っぽい。


国道400号は、車通りも文字通り皆無だったし、僕好みの登りのヘアピンが延々と続く楽しい道だった。今回の東北横断は、平地の田んぼの中を突っ切っていくコースが非常に多く、正直かなり退屈だったのだが、一気に鬱憤を晴らせた。
このあたりのポイントで、夕陽が沈み始め、世界がオレンジ色に染まっていった。



こりゃもう夕暮れ時に日本海なんて100%無理だ。あきらめた。ていうかこの様子だと、当初に予定したとおりのルートを通れていたとしても、たぶん間に合っていなかったのではないかと思う。途中で温泉にも立ち寄らずにがんばっていたのに。やっぱりちょっと無理があったな。


国道49号のこのあたりで、夕陽がすっかり沈んでしまった。


もう寒くて寒くて仕方が無い。もっと重ね着できる服を持ってくればよかった。時間が余っていたら温泉に入るつもりで持ってきた、3本のタオルをマフラー代わりにしたり体に巻きつける。それでも寒くなってきた。幸いタンクバッグの中に使い捨てカイロが4袋残っていたので、胸やわきの下を暖めるようにする。これでずいぶんと暖かくなった。
もうすっかり真っ暗になってしまって、地図を見ることができない。もう日本海の夕陽を見る計画は頓挫したことだし、とにかく国道を進んでいけば確実にたどり着ける、新潟市のフェリー乗り場に向かうことにする。

20:35に佐渡汽船のフェリーポートに到着。すっかり暗くなってしまったし海岸でもないけど、まあ一応は日本海だ。朝から12時間以上も走りつづけた疲れと寒さで、もうすっかり気力を無くしてしまった。


厳密にいえばここはまだ信濃川なのだが、まあ日本海ということで! いやー最後は苦行だったわい。


さて帰宅がまた一苦労だ。新潟亀田ICから東京都あきる野ICに向かう。使い捨てカイロパワーも冷たい走行風にかき消されてしまう。寒い寒い。グローブは春〜秋用の、特に防寒されていないものだったのだが、意外にもたいして指先を寒く感じなかった。
温度表示によると11度だそうだ。それほど低くは無いんだが、何せきている服装が春・秋仕様だし、しかも赤城山付近では、例によって霧が出ていて、視界が悪いのはもとより湿度100%だから、体がますます冷えていく。
21時過ぎに新潟亀田ICを出発して、途中で100kmほど毎に給油する以外は、食事休憩を一度取ったきりだったのだが、あきる野ICに到着したのが25時35分だった。帰宅したのが25時49分ほど。さすがに朝8時半から17時間あまりも運転するのは苦行だった。