今月のミュージック・マガジンのTHE SMITHSとモリッシー特集

…なのだが、これがまた物足りないシロモノだったなあ。20年近く前の記事をコピペして再構成したような内容だ。
当時と同じ視点、当時と同じ価値観をベースとして書かれただけの記事が多い。新鮮さ皆無。
当時からはもう2回転くらい(もっと?)、音楽や音楽を取り巻く状況は変わっているだろうに、この特集には、回転し終えたのちの、現代・現在からの視線が圧倒的に欠けている。
別に不愉快な特集だったりはぜんぜんしないんだけど、読み応えがなかった。むしろ現代の目から、当時に思い入れがある人にとっては、不愉快になってしまうような語られ方をしてもよかったんじゃないかと思うくらいだ。
スミスを聴いたことの無い人に聴いてみたいと思わせたいという志向があるわけでもなく、当時の状況を知る人にも新鮮な視点を与えてくれるわけでもなく、何のために組まれたのかよくわからん特集だった。

とはいえ、僕は世代的にはスミス直撃世代であるわけなんだが、そのスミス直撃期の80年代後半は、人生で一番、音楽に興味を失っていたときで、スミスの存在を知ったのはようやく1990年の1月だった。
FMでスミスのライブをやっていて、それをたまたま聴いて気に入ったのだった。Rankそれは"RANK"の内容と、ほぼ同じものだったのだが、"There is a Light That Never Goes Out"が入っていたりで、今にして思えばなかなか貴重なものであったのだ。
いまでもそのときエアチェックしたカセットテープを持っているはずだ。ちょいと探してみよう…(10分後)…思ったより簡単に見つかった。いまカセットを聴ける機器は14年前に買ったラジカセだけだな。
引っ張り出してこよう…(5分後)…さて再生するぞ、あっ、このテープ、ノーマルじゃん! 当時スミスの価値なんかわかってなかったからなあ。
あっ! 記憶違いじゃなくて、たしかに"There is a Light That Never Goes Out"が入ってた! これは嬉しいなあ。でも、音質、悪! テープがヨレてる? うっわー残念だ。音抜けの悪さは何とかそれなりに補正できても、ヨレはどうにもならんからなあ。残念至極だ。
Louder Than Bombsさて、当時このカセットをさんざん聞いた後、一番曲数が多くてお得だからという理由で"Louder Than Bombs"を聴いてショックを受け、次に"Hatful of Hollow"を入手したら、もうそれですっかり虜になってしまった。
当時は金がなくて歌詞カードが無い輸入盤しか買えなかったし、スミス直撃世代でもないのでそれほど雑誌の記事にもなっていなかったので、世間でよくあるようなモリッシーに自己を投影(=自己陶酔)するようなことは考えもせず、単にステキな音楽として聴いていたのだった。
もしスミス直撃時代にスミスを雑誌記事とかで読んで思い入れたっぷりになっちゃってたら、取り返しのつかない恥ずかしいことになっちゃっていたかもしれない。なにせ高校時代だし。そう思えばラッキーといえばラッキーかもしれない。

ひととおりCDを入手してから、当時の音楽雑誌を古本屋で買い込んで、あと追いでいろいろ知識を得たのだった。
そうそう、ちょうどその頃、ジョニー・マーがギターマガジンの表紙と特集になって(1990年4月号)これも嬉しかったなあ。いまでも持ってます! 本棚から引っ張り出してこよう…(30秒後)…おっ、「『ビッグマウス・ストライクス・アゲイン』は僕なりの『ジャンピン・ジャック・フラッシュ』を書こうとしてできた曲だ」とか、心憎いコメントが載ってるなあ。

Hatful of Hollowやっぱり今でもアルバム単位で言うたら"Hatful of Hollow"が一番好きで、風に舞う二枚の木の葉が軽やかに絡み合いつつ飛んでいくような、モリッシーのボーカルと、ジョニー・マーのギターとの絡みに、めちゃくちゃうっとりしていたものだった。ギターのちょうど良い半歩引きっぷりの絶妙さが素晴らしかった。
Queen Is Dead逆に言えば、ボーカルとギターが絡み合わない傾向のある後期は、それほど愛聴してなかったりする。"Queen is Dead"も、LPで言えばB面ばかり聞いていたし…。