容疑者 室井慎次

実は特にこの映画を見たかったわけではなかった。ユナイテッド・シネマとしまえんにある、音響に合わせて振動するウィンブルシートというのを体験してみたかったのだが、このシートが使われているスクリーンで現在放映中だったのがこの映画だったのだ。
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TVドラマの「踊る大捜査線」からスピンオフされた映画らしいのだが、僕はほとんどTVを見ない人なので、まったく先入観や前情報無しでした。
以下ネタバレなんですが、ネタバレ対策ついでに、そのウィンブルシートの感想を。

この映画は重低音がドカドカ鳴るようなものじゃないので、ウィンブルシートの意味は全然っていうほどなかった。普通に爆発音がドカドカ連発するようなアクションもので使えばいいのに、なぜにわざわざこの映画で使ったんだろう?
そんなわけで、映画本編が始まる前の予告編(トップガンのデジタルリマスターとか)くらいでしか、このウィンブルシートが機能していなかったので、本領を見られなかったであろうと前置きしておきます。
20年近く前に体験したことのある、ボディソニックのシートみたいなもんだろうと考えていたのだが、振動の周波数が予想より高くて、ブルブル震えるというより、ガサガサ震えているという感じだった。
また、振動するポイントがほとんど背中側で、腰(尻)はほとんど振動していないようだ。振動から臨場感を人間が受けるのって、メインは腰なんじゃないかな。腰だけ振動して背中が振動しなくてもそれほど違和感は無いと思うが、その逆っていうのは、人間の感覚とはズレているのではないかなあ。例えば腰が低周波担当、背中が高周波担当っていうのだったら納得が行くのだけど…。
わざわざこのシートを体験する目的で行くほどのものじゃないな、という感じだ。

さて映画の話題。
とはいっても特にあんまり印象は無かった。あまり工夫の無いお話を、なにかもったいつけているような雰囲気を醸し出すべく、妙に間延びした演出で水増ししてるっていう感じだ。
映画の観客のあずかり知らぬところで進行している事柄があまりにも多い。
各組織の対立の構図は描かれているのだけど「構図」だけなのだ。中身があんまり描かれていないのだ。
なにを観客に見せたいのかわからない。どこにもトリックもないし、裏の掻きあいもないし、謎解きもない。
もしかしたらTVシリーズを見ている人には、なにかこの僕が感じるスカスカ感を補完できる情報があったりするのかな?

印象に残ったのは、重要参考人のキョウコ(と呼ばれていたと思うんだが、公式サイトを見てもキャスト表に載っていない…)役の人の演技くらいだった。
最初にキョウコが本性を垣間見せる、新宿でおそらくヤクの売人からなにかを受け取ったときの手の動き、それが大変印象的だった。それまで普通に楚々と歩いていた雰囲気が、一瞬破綻するありさまが良く出ていた。
最後に出頭して、ようやく真相を語りだしたときの、浮世離れした棒読みっぷりもよかった。最初の数秒違和感が大きかったのだが、その違和感が過ぎ去ると、背筋がぞっとした。映画の気温が数度下がった。たぶん意図的な、気温を下げるための棒読みだ。
そして振り向いて、秘めていた狂気が一気に露出したかのようなスゴイ笑顔で、ニコーッ!(エクスクラメーションマーク付きの「笑顔!」って感じ)として、その笑顔(特に目尻の皺の入り方!)にますますぞっとした。その後ニコニコ笑いながら両手をつかまれて連行される様も見事。

(8/31追記)
とある方から、この「キョウコ」の情報をいただきました。
役名が「桜井杏子」で、木内晶子さんです。公式サイトはこちら。
http://www.jame.or.jp/izawa/kinouchi.html
あっ、どこかで見たことあったと思ったら「ギャンブルクイーン」に出てた人だ! 笑いの趣味の似ている友人に「なかなかのバカドラマだからオススメ」と言われて観てたよこれ。