Fairly Tale / Donovan

DVD-Audioについてちょっと調べていたところ、なんとドノヴァンの"Fairly Tale"のDVD-Audio版が出ていると知って驚いてしまった。


"Fairly Tale"は音楽的にはもちろんのこと、音質的にもナローだけどファットな気持ちのよい音像で(オリジナルは65年。僕が持っているのは1992年版のCD)、大好きなアルバムではあるのだけど、DVD-Audioで5.1chにしてなにか魅力や価値が新たに付加されるような録音ではないような...。
あまりにも不思議なので、かえってぜひともこれは聴きたくなってしまった。僕のもっている版より6曲ボーナストラックあるようだし。

そんなわけで久々に"Fairly Tale"を聴き返したのだが、やっぱりいいねえ。
こちらで全曲試聴できます。
特に"Candyman"で、強いギターのストロークが一拍ごとにジャン!ジャン!ジャン!と下降しながら鳴るとき、トータルコンプが掛かって、むん!むん!むん!と音像全体が沈み込むところがなんとも言えずカッコ良すぎる。
強いギターのストロークの「勢い余ったエネルギー」が、深いコンプで無理矢理に押さえ込まれることによって、かえって「勢い余った感」がより強調され、リスナーに「カッコ良さ」を感じさせるのだ。

どの分野でも共通することだと思うが、スムーズで自然なものは、それがより多くの技術を必要とするものだとしても、簡単にどうってことなく行われているように見えることがしばしばあるものだが、それと似たようなものだろう。

現代の機材なら同等の音圧を得るのに、このようなあからさまに音像が沈み込むコンプ効果をリスナーに感じさないで処理するのは、めちゃくちゃ簡単なことだ。なのだけど、そのオーディオ的に正しい処理が、音楽的にカッコ良さを感じさせる効果に繋がるかというと、また話は別なのだ。
とはいっても、これは「勢い余った」適度なアンバランスさを、カッコいいと受け取る価値観をベースにした話なのだけどね。そうでない人もいるのかもしれない。