福島県早戸〜会津中川 徒歩

徒歩だけどめんどくさいのでTouringカテゴリ。
いつも遅寝なので3時間ほどしか眠れなかったが、なんとか5:57郡山発の電車に乗れた。

 

例によってクリックすると、でかいバージョンが開くものもあります。
まず会津若松に向かう。途中で6時発表の運行状況をチェックしたところ、昨日から状況が変化し、もう問題無しになっていたようだ。というわけで予定どおり進行することにする。
郡山では積雪数センチという程度だったのだが、電車が進み、空が明るくなるのに比例するように、積雪量も増していく。



会津若松只見線に乗り換え30分待ち。駅の立ち食い蕎麦はやはり東北系の、丸い味でもちもちした食感であった。

 

待合室に高校生が結構いたので、席を取られたらかなわんと思って、駅からほとんど出ることも無いまま、只見線の車両に乗ってしまう。7:37に会津若松を出発。


ちょっと市街地から離れると、もう世界は真っ白な雪に覆われている。たぶん田圃の中を突っ切っている路線なんだろう。


8:08会津坂下(あいづばんげと読みます)で、高校生がどーっと降りて、2両ある車内には僕を含め4人しかいなくなってしまった。


このあたりが平地と山間部の境目なのかな? あとは進むにつれてどんどん山深く、雪深くなって行く。
会津宮下で、僕以外の全員が降りてしまった。



そして目的の早戸には、予定より20分ほど遅れて、9:42に到着。駅員だけを乗せて只見線は去って行った。

 

周りには民家や施設は、ほぼないようだし、ホームの目の前にすぐ、飛び込めそうなくらいなところに只見川が流れているし、予想していた以上の秘境駅風味でたいへん満足だ。この写真は4枚を横に合成したもので、実際には120度以上の画角です。


待合室まで、ふくらはぎくらいの深さの、サクサクした雪をかき分けて行く。


待合室の中には、駅ノートというものがあった。存在は聞いたことがある(例によって「鉄子の旅」知識)のだけど、本物を見たのは多分初めてだ。視界に入ったことはあったかもしれないが、今まで意識したことがなかったので記憶に残っていなかった。

 

最新の書き込みは、3日前の、会津川口から早戸まで歩いて来たという女性のものだった。僕も何か書こうと思ったのだが、備え付けのボールペンのインクが出なくて、自分のペンはバッグの奥の方に入れてしまったので取り出すのが面倒で、やめてしまった。
この駅ノートの書き込みには、前情報どおりに、駅から出て右手に進んだところにある早戸温泉についてのものが多かった。僕もここへ行くつもりなのだ。



そんなわけで、9:55、待合室から出て、右手に曲がろうとしたところ、左側へ行けば川べりに下って行けそうなことに気づいた。次の列車までたっぷり時間はあるし、まずはこちらへいってみる。
すると、いままで降っていた雪が止み、さらには太陽までときどき顔を出してくれる。
ふくらはぎから膝下くらいの深さの雪をかき分けて行く。ふだん使わない筋肉を使うので、なかなか疲れる。

  

晴れたり曇ったり、天候は安定しないが、時折パーッとまぶしい光が差し込んでくる。先ほどまでの天候がうそみたいだ。

 

  

川べりには着実に近づいてきたのだけど、残念ながら、全く除雪されず、道の境目が分からないところに至ってしまった。ためしに雪をかき分けてみると、自分の胸程までの深さだ。あきらめて元来た道を戻る。今度は登りなので、さらに疲れる。



10:25、駅の上の国道まで上ったところ、ちょうど除雪車?が汽笛を鳴らしながら、早戸駅を通過していった。


駅の全景写真を撮ろうと左側(西)に移動したら、ずいぶん風景の見ごたえがあったので、ついつい熱中して撮影してしまい、気づいたらもう1キロくらい駅から離れてしまった。目的の早戸温泉とは逆方向だ。しまった。

 

 

 

また同じ道を戻るのはなんかシャクだし、この西側の風景がきれいで気持ち良かったのでもったいなく思い、あっさり予定を変更して、次の会津水沼駅まで国道を歩くことにした。距離にしてここから4キロくらいかな?

遠くにポツンと駅舎が見える。さきほど「ホームから川に飛び込めそうな」と書いたが、どうも目の錯覚だったようだ。さすがにここまで幅跳びできる人はそうはいるまい。




11:00、下大牧集落に至ったころにはすっかり晴れわたっていた。上りと下りが連続していることもあり、体は火照って暑いくらいだ。
しかし実際には気温は低いらしく、デジカメのバッテリーはすぐに電圧が下がってしまう。メインの*istDとサブのF810の電池を、交互に取り出して胸ポケットに入れて暖める。人肌くらいに温まると、面白いように電圧が復活している。

 

  

 



この集落を抜けたから、そろそろ会津水沼駅があるはずなんだが、ぜんぜん標識や看板は見当たらない。と、道端に突然、踏み切りが出現していた。


こういう人どおりの少ない場所でわざわざ踏み切りがあるのは、駅の近くであるからにほかならない。すぐ近くに駅への入口があるはずだ。
国道にはなんにも標識や案内などなかったのだが、いかにも怪しい脇道が出現した。

 


11:55、脇道に入って正解だった。会津水沼駅が雪に埋もれるようにあった。
除雪して溜まっているからってのもあるだろうが、僕の肩の高さくらいに積雪している。140~150cmくらい?
ここで正午を知らせるメロディが道端のスピーカーから鳴り響いた。懐かしいな。田舎ってそうなんだよね。朝7時とか正午とか夕方5時に自治体がこういう余計なお世話するの。
次の電車は15時なので、まだまだまだ時間はたっぷりある。さらに次の会津中川駅まで歩いてしまおう。地図で見る分には距離は4キロくらいかな。この駅の近くには「こぶし館 そば処 民俗資料の展示あり」という施設があるとのことで、そこで食事をすることに決めた。



と、歩きだしたら、今までと違って昇り傾斜メインの道だ。右足の内股が疲れてきた。雪は降っていないのだが、木々に積もった雪が風で飛ばされるし、次第に曇ってしまったしで、少し寒くなってきた。道端の温度計によるとマイナス2度だそうだ。

  



12:55、山間部を抜け、上田ダムを過ぎて、道の傾斜が無くなり、会津中川の集落に入った。

 

この辺りは散水して雪対策をしている。レインパンツ(バイク用)とゴアテックスのトレッキングシューズを使っているのだが、それでもかなり濡れてしまった。歩行者のことは想定してないのかな。実際僕以外に歩行者って見ないし。
外に出ている人って、除雪している人しか見ない。子供の姿はぜんぜん見えない。声もしない。そういえばさっきの下大牧集落も同様だった。

 

 

例によって標識や案内などは皆無だったのだが、「会津中川駅前」というバス停があったので、駅を発見できた。


バス停はこんなありさまだったが。




ツーリングマップルで見る分には、駅の目の前に目的の「こぶし館」があるように見えるが、駅の目の前にあるのは町民体育館だった。こぶし館は駅を過ぎてさらに数100m先だった。13:10にやっと到着。


さっそく蕎麦を食べることにする。お品書きによると、これらのメニューは、蕎麦も野菜も味噌も豆腐も、全部ここ金山町から産したものだそうだ。それでは、このへん特産の、アザキ大根高遠そばを頼む。と、すぐになにか運ばれて来た。


「ご用意できるまで大根をすりおろしてお待ちください」とのことだった。ちょっと待って蕎麦が運ばれてくる。


まずは大根を入れずにこのまま食す。やっぱり東北系だ。丸い味にもちもち食感に東北系のつゆ。あまり食材に詳しくないので、つゆの味のどの要素が僕に「東北系」と思わせているのか、説明ができない。でも明らかに東北系と信州系は全然違う。それはともかくなかなかうまい。あまり強烈な個性はないんだけど、食べ飽きない。辛み大根は、あまり多く入れない方が僕好みであった。そんなに「辛い」というほど辛くはなかった。
僕が食べ終わるのを待っていたかのように、雪がまた降り出してきた。ちょうど僕の行動中に雪が止んでいたので、たいへんラッキーであった。

売店に、この地域の歴史資料などに混じって、しどけなく肩を露出させた着物の女性の絵の表紙の「よべこき」という冊子があって、これは何事だと手に取ったところ、「奥会津の風俗の伝承」みたいなことが表紙に書いてあって、中を開くと、奥会津の匿名のおじいさまおばあさまが、若かりし頃の体験談(猥談)を語っているのであった。全3巻。
こりゃ珍品だわいと思ったのだが、1冊1400円(記憶不確か)もする。数百円なら買ったんだが。
いま検索したところ、僕が見たものそのものかどうかはわからないがヒットした。
http://www.future-power.net/mod/amz/book/isbn_4897572932.html
http://www.jbook.co.jp/p/p.aspx/1352248/s/

珍品と言えば、沼沢湖ではキウイが特産らしく、売店キウイようかんなるものがあった。キウイってこんな北の方でできるものだったのか。しかし雪の降る中、手荷物は持ちたくないし、リュックは着替えでパンパンだしで、買って帰るのはあきらめた。1個だけバラ売りしてくれればいいのに。



14:15、まだ電車が来るまで1時間はあるのだが、駅に向かう。あえて寒い待合室で過ごすのも乙なものだ。


雪はますます激しくなってきた。待合室のなかには除雪機が置いてあって、そのガソリンが臭い。

 

待合室に置いてあったPHPという雑誌の年金生活特集を読んで、漠然だが強烈な将来への不安を感じたり、尿意に耐え切れなくなったが、駅のトイレが閉鎖されていたので新雪に向かって立ちションしたり、これをザウルスで打ち込んだりなどなど、有意義に電車の待ち時間を過ごす。

15:19、この雪の中、ほぼ定刻どおり、2分遅れで電車到着。


しかし会津川口に至ったところで、駅員が「終点でーす」と声をかけて回っている。え?これは小出まで行くんじゃなかったっけ? 尋ねてみるとあっさり「行きませんよ。運休です」とのこと。あわてて携帯で調べてみると、たしかにその通りであった。


これはもうこのまま会津若松に折り返すしかない。実にガッカリであった。
会津中川〜早戸の、僕が歩いた区間を列車は併走する。いまは雪が強く降っていて、道はまったく別の顔を見せている。これは上の写真にもある、川べりにおいてあった船。


風景はグレーのどんよりに包まれ、白い雪が列車の窓を平行に過ぎ去って行く。来たときのちょうど12時間後、19時過ぎに会津若松に到着。

来たルートをそのまま逆にたどって帰宅。やっぱりというかなんというか、当初の予定と大幅に変わってしまったが、これはこれでなかなか面白かった。