キング・コング(ネタばれ含)

公式サイトはこちら。オリジナル版は見たことがあるような気がするのだけど、かなり子供のころにTVで見た程度で、ほとんど記憶に残っていない。
めちゃくちゃ長かったなあ。3時間以上? 最初の1時間は、ほかの劇場に間違えて入ってしまったのかと思った。

ネタばれ前に関係ないことを書いておくならば、コングの動作音関係が、かなり納得いかないものだった。体重何トンって設定なのかわからないけど、とりあえずはアフリカ象程度にはデカいコングなのであるが、その足音をはじめとした動作音は、通常の人間サイズとほぼ変わらないものなのだ。玄人目に見たらどうなのかわからないが、僕の目から見ると、コングの動きには重量感・肉塊感があって、スゲエなと思っていたのだが、動作音が妙に軽くてたいへん拍子抜けであった。
音の軽さもあるが、設地面積が小さい音にしか聞こえないのがすごい違和感だ。音で体のでかさがあんまり表現できていない。サイン波的な低域だけ妙に持ち上げていて、芯となる音素が抜けている。あんなにでかい足が歩いているのに、タスッ、って音はないんじゃないか。普通の人間サイズの動作音にしか聞こえない。

そろそろ以下ネタばれです。
ネタばれで音の話を引き続けば、音源が発生した位置から、数メートルの範囲しか考えられていない音響効果をされている印象。
たとえばあのおなじみのビルのてっぺんで落ちそうになってしがみついた際、しがみついた手のひらとビルの衝突音はあるんだが、あのでかい数トンの体がぶつかり、こすれ、跳ね返る様子が音で表現できていないので、違和感が大だ。
ジャングルでコングが高所からズドーンと着地した際、ジャングルの虫や鳥にとっては、これは大混乱に違いないはずなのだが、虫や鳥の環境音には何の混乱も表現されておらず、ただ淡々と鳴り続けている。近くの岩壁や樹木も、特に何もリアクション(衝撃で枝が揺れるとか岩が崩れるとか)の音を発していない。コングの落下、それによって起きる衝撃音、という、狭い現象しか再現していない。落下したことによって、何が引き起こされたのか、落下された環境に、どのような変化が生じたのか、それが表現できていない。
これがアニメ調だったり、昔ながらの特撮映画だったら、あまりに音の情報量が多いと、映像との差異でかえって違和感が生じるものなんだろうが、あれだけCGバリバリなのに、音だけが昔ながらのまま、ってのはないんじゃないだろうか。

さて音の話はそろそろ終わり。
僕としては、コングがニューヨークを思うさま蹂躙するシーンを期待していたのだが、そのような映画を期待するとガッカリします。3割はコングの住む髑髏島への航海で、5割は髑髏島での脱出行で、残り2割がニューヨークでの大暴れです。
「人類の傲慢さに警鐘を鳴らすコングの存在!」みたいな感じの、メッセージ性っぽい要素を持たせようと思えばできそうなんだが、あえてやってるのかどうか、そういった要素はアピールせず、アクション要素を前面に出している。
それは良いのだが、なにせ髑髏島でコングが登場して大活劇が始まるまでに、普通の映画なら1本終わってしまうほどの時間がかかるので、見ている僕はずいぶんとテンションが下がってしまった。アクション性に的を絞るなら、前半部はもっとスリムにするべきだったと思う。

そのアクションも、こりゃスゴイと思ったのは、恐竜と蔦に絡まりながら谷を落下しつつ戦うシーンくらいだった。スゴいCGだ、とは思っても、スゴいアクションだ、とはあまり思わなかった。アクションのアイディアそのものでスゴさをあまり感じさせてくれなかった。
上記で書いた、音でコングや恐竜の巨体さがあまり表現できていないというのも、スゴさ感の不足に繋がっているとも思った。

お話的にも、いろいろツッコミどころ多し。
コングがアンに夢中になるのは良しとして、アンがなぜここまでコングを擁護するのか、その動機が観客に伝わってこない。
あの巨体が、クロロホルム一瓶程度で、あんなに完璧に麻酔が効くものなの?
髑髏島からどうやってコングをアメリカまで連れ帰ったのかがわからない。船の甲板に乗っけた?どうやって固定した?「クロムの鎖」すら引きちぎるコングを?
アメリカ軍まで繰り出して、火器でコングを倒そうとしているのだが、またクロロホルムを使えばいいじゃん。一瓶で倒せることはわかってるんだから。