茨城県そば街道〜龍門の滝〜水沼駅温泉

9時に日立市を出発。県道36号を西に向かい、別名「そば街道」だという、県道33号を目指す。R349と交差する辺りになると「里美そば街道」などと書かれた看板が見えてきて、期待が膨らむ。
県道33号を北上し、蕎麦屋を探す。しかし意外に見かけない。以前に行ったことのある、山形のそば街道には、蕎麦屋が連なっていたのだけど。幟は立てられているので、この県道から奥まったところに蕎麦屋はあるようだ。
この県道、たんぼの真ん中を突っ切って行く、実にのんびりとした道だ。

 

僕は北関東の田舎の平坦な盆地で育ったので、子供のころにものすごく見慣れた風景で、なんだか故郷の道を走っているようで、ぜんぜん新鮮な感じがしない…。
今回、太陽が昇っている間に走った道は、9割方、こんな感じの雰囲気だった。やっぱり山だったり海だったり、いろいろ変化が起きないと退屈するよなあ。



北上しきってR461との合流地点にきたので、引き返して目をつけていた地点に向かうことにする。県道33に「手打ちそば」と幟の立てられた脇道に入って行く。どんどんと山奥に向かって行く。

 

車で5分位?山奥に入って行くと、もうこれ以上進めない地点に木勢旅館があった。そばや猪鍋が売りらしい。


民家のような旅館だ。玄関脇ではコンニャクを干していた。凍みコンニャクってやつかな。まだ11時にもなっていなかったのでちょっと心配だったが、食事はもうできるそうだ。ざる蕎麦を頼んだ。十割蕎麦だそうだ。


固めでつるつるとした食感は、昨年秋に食べた、福島県檜枝岐村の、同じ十割の「裁ち蕎麦」と似ている。蕎麦の風味は裁ち蕎麦ほどではない。
いつも思うのだが、十割ってそんなに重要視するようなポイントでもないと思うんだが。いままで食べた十割蕎麦って、蕎麦自体の瑞々しさが、ちょっとスポイルされがちな印象を受けることが多かったので。
こちらの蕎麦は、うまいのだけど、それほど感動するほどでもなく…といった感じだ。つゆがちょっと単調なのがもったいないかな。
それより、海苔を含んださしみコンニャクがやたらとうまくて驚いた。500円で売っていたので買った。帰ってから食ってみたら、しょうゆとわさびの差なのか、味にシャープさが欠けて残念だった。しょうゆは薄口を使うのがコツっぽい。



さてもう1軒ほど行きたいところだ。県道33を南下して行くと、1日限定二十食という、いかにも頑固親父系の蕎麦屋らしき看板があった。


「そば処 かねさん」という店で、11時半開店とのことで、いまちょうどいい時間だ。店に到着したのは11:35だった。場所はおそらくこのあたり


開店間もなくなので、暖房もまだ全然効いていない。頑固親父系の店ではなく、脱サラ系っぽい雰囲気がどことなく漂う。店内にCBXが置かれていたのには驚いてしまった。


メニューに「絶品!ちたけそば」とあり、いかにもイチ押しっぽい雰囲気だったのでそれを頼む。どうやら、この辺りの名産のキノコをダシに使ったせいろそばらしい。
CBXについて話を聞こうと思ったら、あ、音楽かけるの忘れてた、と言って、サブウーハーからハムノイズが盛大に聞こえるミニコンポで、演歌を流しはじめてしまった。もう一人顔見知りらしき客がきて、その人とボソボソと会話しているので、なんとなくタイミングを逃してしまった。こういうシチュエーションに入り込むの、すごく苦手なんだよな。
さて蕎麦が上がってきました。


さきほどの店と同じく、固めでつるつるした食感だ。蕎麦は偏平なので、ますます裁ち蕎麦と似ている。蕎麦だけ食べてみると、おいしくいただけるのだけど、これぞ、といったポイントが無い感じ。食数限定だから、そうとうなものを期待していたのだが。
キノコダシのつゆも、味に中心が無いというか、芒洋と味が広がっている印象。ちょっと残念な感じだ。
普通のせいろそばを頼んだ方がよかったかも。キノコメインでない、シャープで辛い味のつゆなら、かなり印象が変わると思う。



この道を数10km北上して、袋田の滝に向かう。地図によると「冬は全面凍結」とのことで、いかにも見ごたえがありそうだ。
しかし、近くまで寄って見ると、観光バスがずらーっと並んでいて、団体客がガヤガヤと列をなしていて、とても落ち着いて見られそうな雰囲気ではない。ちょうど12時で、一番込み合う時期だし。非常に苦手な雰囲気だ。
これは無理だ。あきらめることにした。



地図を見ると、R461を西に行ったところに「御前岩 男なら見に行くべし!」と書かれているポイントがある。それを見たとたん、僕の頭の中では、アストロ球団の歌が「おっとこ〜なら〜超人ガッツでやってみな〜」と流れてきた。やけに挑戦的じゃないか。そこに行ってみる。

 

…なるほど、男性大喜びな形状の岩であった。これで併設の御前岩物産センターに秘宝館めいたバカみやげがあったら面白かったのだが、意外にも普通の資料館のようであった。いま検索したところ、ここって地粉100%の蕎麦を食えたんだね。営業している様子が感じられなかったので、よく見ずに通り過ぎてしまった。もったいないことをした。



うーん今回はどうもハズレっぽい雰囲気だな。せめて運転して楽しい道ならともかく、延々と平地のたんぼを突っ切っているだけだし。走っても走っても雰囲気が変わらない。

地図を見ると「龍門の滝 大蛇伝説の残る見ごたえのある滝」というのがあった。さきほど袋田の滝を見逃したので、ここに行ってみる。地図はこちら。やっぱり延々とたんぼを突っ切って行く。

まずはすぐ近くの太平寺という寺に立ちよってみる。


仁王像2対がいる門があり、蜘蛛の巣はそこかしこに張っているがなかなか立派だ。どうも水子供養を行っているらしい。子供向けのおもちゃや縫いぐるみが奉納?されていたりする。


ここのお地蔵さんが、赤ちゃんの扮装をしているのだが、顔があからさまにおっさんで、なんだかすごく違和感絶大であった。


対して、このお地蔵さんは、光線の具合もあるだろうが、なんだかよい風情を醸し出していて(とくに肩と首筋の辺り)、妙に印象的であった。やっぱり蜘蛛の巣が張っているけど。

  

足元に、1円玉が置かれていたのは、なにか謂れがあるのだろうか。

さて龍門の滝に行ってみる。くねくねした階段を下って行くと、階段自体が展望台になっていて、視界が開けているのでよく滝が見える。

 

すぐ道路沿いの、平地で開けた場所が、突然にガクンと落ち窪んで、かなりの落差の滝になっている。山の中ならともかく、平地でなんでこんな落差が生じたのだろう。これは不思議だ。
不思議と言えば、岩が緑や青の光を反射しているのも不思議だった。この写真では緑成分しか分からないけれど。


静かで落ち着いた雰囲気が気に入って、これからの行動計画を立てつつ、小休憩した。



もう15時半で、そろそろ帰宅を考える時期だ。しかしなにせ今回はあんまり走った気がしない。もうちょっと走りがいのある道に行きたい。そこで、ここからガーッと西に走って、ドライブを楽しみつつ関越道まで行って、そこから帰ることにした。
東北道からだと、首都高を抜けなければならないのがすごくイヤだというのも、わざわざ関越道まで行く理由の一つ。

まずは宇都宮ICまで行く。県道10県道73と国道を避けて行く。やっぱりたんぼの中を突っ切って行く道で、もういいかげんにしてくれという感じだ。
宇都宮ICからは日光宇都宮道路に乗り、距離を一気に稼ぐ。
終点の清滝でR120に降りる。
R120を沼田ICまでガーッと行くつもりだった。何度かバイクで走っていて、楽しい道だってのは知っているし。しかし残念なことに、金精峠冬季閉鎖なのだそうだ。


しかたないので予定を変更して、分岐点でR122に移動し、わたらせ渓谷鉄道沿いに南下し、赤城山の裾野を横切るR353に乗り換え、渋川伊香保ICに向かうことにした。
ときどき峠があったり、路肩が凍結していたりで、ようやく運転が楽しくなってきた。まわりがたんぼではなく山だというだけでも、全然気分の盛り上がりが違う。
足尾の市街が見えてくる。ここからはわたらせ渓谷鉄道に沿って南下することになる。とはいっても、もうすでにかなり暗くなっちゃってるのが残念だ。


この、わたらせ渓谷鉄道の水沼駅には、露天風呂が併設されているとのことで、ぜひとも入ってみたい。
しかし到着してみると、水沼駅は大変な事態に陥っていた。

 

いったいなんですかこのイルミネーションは! 旅情だいなしです。しかも"HAPPY KAPPY"ですか。検索してみたところ、このカッピーについての詳細情報を得ました。「髪形は今風に一段とモダンになりました」らしいのだが、田代まさし、もしくは所十三の漫画の登場人物のように、額の真ん中にちょろっと髪が垂れているのが、ナウかつモダンなのだろうか。

駅の切符売り場を左手に入ると、内風呂があり、さらに進むと、露天風呂がある。駅のホームの壁を一枚隔てたところに、即、内風呂の入り口があるのだ。特に駅の入場券は必要なく入れてしまった。風呂に入るには、入館料として大人500円。
露天風呂は、脱衣所も露天なので、氷点下2度の現在ではかなり寒い。


自分ひとりになった隙を狙って撮影。残念ながら外は真っ暗だ。一度電車で昼間に来てみたいね。塩素で消毒しているらしく、かすかにその臭いがしたのが残念だった。



すっかり温まってから、赤城山の裾野を走るR353に沿って、渋川伊香保ICへ向かう。そういえばこの道を走るのは初めてだ。この時になって、ようやく運転が楽しい道になった。時々くねくねして、時々視界が開ける。左手には、前橋市の夜景が広がっている。


途中、「きじそば きじなべ」という幟の立てられた店があり、ちょうど腹が減っているので入ってみる。このあたりはうどん文化圏だと思うのだが、なんか蕎麦を強調している様子だったので、きじそばを頼んでみる。


そば単体で食べると、すごく食べなれたイメージの味。ぜんぜん違和感無い。秩父あたりで食べる、いつもの好きな蕎麦って感じ。なかなかうまいが、いつもと違う感じを期待していたので、ちょっと拍子抜けだ。
きじは、ほんとにちょろちょろっとしか入っていなくて、これもまた拍子抜けであった。油揚げが大量に入っているので、その味が全体を支配してしまっている感じ。ちょっともったいない。
今回は、悪くは無いんだけど、今ひとつ、おおーっ、って蕎麦は食えなかったな。奥久慈の地鶏そばはうまかったが、蕎麦がうまいというより、地鶏がうまかったから印象的だったのだし…。

店の客の会話を聞いていたら、語尾が「だべ?」「〜なん?」になったり、「大変だ・面倒くさい」という意味の「よいじゃない」(「い」にアクセント)という形容詞など、埼玉北部育ちの僕には非常に懐かしい方言が聞こえてきた。やっぱり文化圏的に、この辺とは共通してるんだなあ。

渋川伊香保ICからは、関越〜圏央道経由で、普通に帰宅。