大潮の道 / マイクル・スワンウィック(若干ネタバレ)

背表紙に「科学と魔術を華麗に融合させ」とあって、そういう「魔術」とか「魔法」とか、「魔」的な設定をSFに絡めるのが好きではないので、以前に図書館で手に取りはしたのだけどパスしていたもの。
しかし今回、解説を先にチラッと読んでみたら、「魔術」とはいっても、テクノロジーが制限された異世界の惑星で、禁じられたテクノロジーを用いるもののことをこの小説内では「魔術師」と読んでいるらしきことを知り、なんだそれなら全然OKだわ。と思い読み始めた。たしかル・ヴィンの短編にもそんなようなのがあったような。

大潮の道 (ハヤカワ文庫SF)

大潮の道 (ハヤカワ文庫SF)

のだけど、これはかなり読みづらかった。登場人物の内省は、内省そのものとして書かれず、行動や他人に向けたセリフの中で示唆されることがほとんど。なので特に主人公である「役人」の推理や行動に、強く唐突感がある。特にラスト。
また、書かれている視点とか時間軸とかの切り替わりが明確にわからない。あえて不明瞭にする表現であるのはわかるのだけど、最後までとうとう馴染めることが無かった。
謎めいた物事を、読者がわかっているのを前提としているかのように、唐突に登場させて書く手法というのは、SFには珍しくは無いので、それはそれでちっともかまわないのだけど、ちょっと手がかりがなさ過ぎて困ってしまった。「地球」って結局いったいなんだったのだろう。

設定的には、僕の好きな植民惑星カルチャーSF要素もあるのだけど、異世界側の立場に立って描かれた視点がほぼ無い。外世界から派遣された「役人」の視点から惑星を描いていることがほとんどなので、異なるカルチャーが衝突、対比されることはあまりなく、そこは物足りなかった。まあ作者の描きたい重心はそこではなかった、というだけなんだろうけど。
しかしせめて「ホーント」の生態や生活は、もうちょっと描いてもらいたかった気がする。

読後感が釈然としないのだが、たぶん中途半端に忘れた頃合で読み返したら、かなり印象が変わりそうだと思った。