火星縦断 / G・A・ランディス(ネタバレ)
最近暇なのと自分の中でSFブームなので、SFばっかり読んでいます。いわゆる一筆書き乗車で、延々と数時間電車に乗りながら。やはり電車の中は集中できる。
- 作者: ジェフリー・A.ランディス,Geoffrey A. Landis,小野田和子
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2006/05/01
- メディア: 文庫
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やっぱ理系の人の小説だなあと思った。文学っぽい迂遠さが皆無。直球ど真ん中。良くも悪くも。
状況がものすごく明快に把握でき、全く迷うことが無くノンストップで最後まで読み進められる。文章の見通しが良い。すぐにでも映画化できそうなタイプの明快さ。明快すぎて物足りないかもしれない。結末はものすごくハリウッド映画調。
火星探査隊は数々のトラブルに見舞われつつ地球への帰還を目指すわけだが、その過程のトラブルや状況描写の説得力がすごい。前提となる火星の環境について僕は全然知らないのだが、もしこの小説内のような環境であるなら、なるほど確かにこのようなトラブルは起こりうるのだろうな、と思わされてしまう。
前回の探検隊が、乗組員が持ち込んでしまった白癬菌(つまり水虫)がもとで、宇宙船まで菌に苛まれて全滅してしまった描写など、特に読み応えあった。
そんなわけで明快さに引かれてどんどん読み進められて、なるほど面白いサバイバルSF小説だわい、と満足はしたのだが、あとで読み返したくなるような読後感が無い。ものすごくスッキリと、心に引っかかるところが無く終わってしまう。
読後に疑問がほぼ残らないスッキリさは美点ではあるのだけど…。
疑問と言うか、これはちゃんと書くべきだったのではと思うところは一点。
一行がようやく第2次遠征隊の残した基地(水虫で全滅した基地)に辿り着き、地球に連絡を取ったとき、ライアンが発見した化石を地球側にアピールする描写が無い。世紀の大発見なのになぜ?! 化石の存在をアピールすることで、可能性は薄いとされていた方針を変更されて、救援隊が送られる可能性が増えるのに、これは解せない。
この時点ですでに一人は火星に残されることが明確になっていたのに…。