気に入ったフリーVSTプラグイン(ダイナミクス系)

VSTにはフリーでも優秀なプラグインが多いので、VST to RTASアダプターを使って、いろいろ導入してみている。
基本的には、安心して使い慣れている、定番のWavesもの等をまずチョイスしたいので、飛び道具的なものや、製品では意外にありそうでないもの、的なものを好んで使っております。

・MB Plugins "Spatty"

ステレオ素材の、MIDとSIDEのバランスを変えられるプラグイン。これは製品で似たようなものを聞いたことが無いような気がする。これは地味に便利です。

広がりすぎてしまっている音を、Panを狭めて対処しようとすると、センターにエネルギーが集まりすぎたり、位相の問題で不自然になったりすることがあるのだけど、これでSIDEの音量を落とせば、楽にまとまる事が多い。

悪条件下で野外ステレオ録音したときなど、左右にピッタリ貼りついたところにノイズ(風とかハンドノイズとか)が入ったりするのだけど、それらを目立たなくできる。

中央にエネルギーが集まりすぎている素材を、音を広げる方向で対処しようとすると不自然になったりすることが多いのだけど、これを使って、逆に中央のエネルギーを下げると、自然に対処できたりできる。

これをいわゆるモノラーとして使ってみようと考えた。
ステレオ素材を単純に合成してモノラルにすると、中央の音は3dB音圧が上がってしまうのだが、それを回避するモノラーという製品があるのだ。(一般名詞かと思っていたら、今調べたところ商品名だった)
意外にも、ステレオ素材をモノラルにせざるを得ない事態に陥ったことがあまりないので、いままで特に必要性を感じていなかったのだが、今後の機会のために試してみた。
しかしSpattyからのアウトプットをモノラルにまとめたとたん、まったく期待していたような効果が得られない。MIDの音量変化のアルゴリズム(M-Sに分離するアルゴリズム?)自体が、モノラルに合成したときに役に立たないものなのかな? このあたりは僕にはさっぱり推測できない。とりあえずモノラーとして使用する用途には向かないことはわかった。

(2/3追記)VST to RTASでコンバートして、このSpattyをProtoolsで使っていたところ、セッション内に複数本(3本くらい)インサートしたところで、謎の強制終了に見舞われてしまった。外すと安定するので、間違いなくこれが原因だろう。不思議なのは、1本だけなら特に問題は起こらないようだ。ちょっと気をつけて使ったほうがいいかも。



・digitalfishphones "endorphin"

これもMID-SIDE加工もの。MIDとSIDEでバランスを変えてかけられるコンプだ。今月号のサンレコで高価なハードウェアの製品であったね。これはさらに高低2バンドでスレッショルドを変えて設定することもできます。
コンセプト的には便利そうなのだけど、これがどうも性に合わなかった。コンプレッサーとしてのかかりかた自体が、あんまり好みじゃなくて、どうも馴染めない…。特にOptoにしたとき。

それにコンプもアウトプットもサチュレーションもゼロの状態でインサートしただけの状態で、サイン波を入れてみたところ、不規則に倍音が乗っかってしまう。どうも安心して使えない。



・digitalfishphones "dominion"

同じ作者のトランジェント操作もの。コンプ/エキスパンダーではなく、トランジェント自体を(きっと先読みで)操作するもの。製品ではWavesの"TransX"と似たものだ。TransXは出た当時から気になっていたのだが、いまだに使った機会が無い。なにかと便利そうなのだけど。
コンプでは、スレッショルドレベル以下を操作することによって、相対的にアタック感・サステイン感を強調するものなのだけど、これは波形のピーク自体を先読みして、それを強調しようとするもののようだ。

これはなかなか便利で気に入った。オフめな素材を「近づけ」たりするのに使える。
深く掛けたり、マスターで掛けると、どうも加工感が漂うので、使えるシチュエーションが限られるけど…。"TransX"はもっと自然に掛かってくれるものかな。いつかは買いたい。
しかも"TransX"はマルチバンドでも設定できる。これは想像するだけでも実に有効そうだ。
僕は似たような効果を得たいとき、C4をエキスパンダーとして使用して(これが可能なことは意外に知られていない。ノイズ低減用途にも便利)いたのだが、トランジェントを直に操作するTransXのほうが、より簡単に自然に利くはずだ。