ゾディアック(ネタバレ)

街中を歩いていて、なにか映画を見ようと思っていたとき、ポスターに暗号めいたものが書かれていて「この暗号を解いてはいけない」などと記されている。どうも実話のゾディアック事件という、連続殺人鬼の謎を追う…というテーマのようだ。ちょうど大戦中の日本陸軍暗号部隊のノンフィクションを読んでいたことも有り、さっそく見ることにする。

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ところが、ポスターで大々的に強調されていた、暗号の解読はまったく物足りないものだった。暗号自体が初歩的だということももちろんだが、解読の過程がほんの少ししか描かれない。
最後の最後で主人公であるグレイスミスが、事件後10数年たって「図書館に通い詰めて」2通目の暗号を解読したときにいたっては、解読過程は完全に描かれないし、解読内容も映画内では完全に語られない。これはさすがにありえないだろと目を白黒させてしまった。
この点で期待して映画を見ると、間違いなく大変がっかりします。

なので上記リンクの解説に書かれているように「徹底的なリサーチを元に「ゾディアック事件」を追いかけるというサスペンス映画としての側面と、事件に没頭していく4人の男を追う人間ドラマ」として見るべき。
なのだけど、サスペンスとしても、実話だから仕方がないのだが、有力容疑者はいても結局のところ未解決のままなので、えっ!これで終わりなの?!マジで?!感が拭えない。

本来は「事件に没頭していく4人」の中で、最も素人で事件とは無関係なグレイスミスが、執念で証拠を集めていく様は、それなりにスリリングだ。しかし謎解きの醍醐味を存分に味わえるというものではない。謎解きというか、証拠集めドキュメンタリーである。謎解きを期待して映画を見るとがっかりするかもしれない。
また、上記したように、宣伝では大いに強調されていた暗号解読が、あまりにもあっけなかったので、その反動で僕は大いに印象を悪くしてしまった。
グレイスミスの晩年が全く描かれず、終盤が恐ろしく駆け足になってしまっているところも、えっ!これで終わりなの?!マジで?!感を強調している。きっとそのグレイスミスの著書が、この映画の原作か、下敷きになっているのだと思うのだけど…。

ゾディアック (ヴィレッジブックス)

ゾディアック (ヴィレッジブックス)

事件から22年ぶりに容疑者の写真を見せられていた男性は、最初の事件での、生き残りの男性かな? 事件当時にカーラジオから流れていた、ドノヴァンの「ハーディ・ガーディー・マン」がこのシーンのBGMになっていたし…。
なんでこの男性に、有力容疑者としてあの人物が挙がってからすぐ、捜査の手が及ばなかったのかが、この映画中での最大の疑問だ。

そんなわけで、なんだかいろいろ釈然としない映画だった。公式サイトを見ると、なんだか妙に推薦コメントが豊富なのだが、なんでこんなに持ち上げられているのかよくわからない。