吾妻線 樽沢トンネル

吾妻線にある、全長たった約7.2mの、日本で一番短いトンネルといわれる、樽沢トンネルというものを知り、ぜひ観に行こうと思い立った。「全長たった約7.2m」といっても、林道のトンネルとかじゃ、まあ普通にあるような気がするが、鉄道のトンネルとしては確かに珍しいだろう。

このトンネルは岩島駅川原湯温泉駅間にあるという。ローカル線沿線をゆっくり味わおうと思い、岩島駅で降りて、徒歩で行ってみることにする。

岩島駅に向かう途中の車窓を眺めていると、祖母島駅近辺が、どこがヘンなのか具体的に言えないんだけど、なにかがヘン、見慣れない、違和感がある、微妙に異世界っぽい、って感じの、僕好みの風景だった。このあたりはまたぜひ来てみたいと思う。

岩島駅に降り立つ。地図はこちら。国道145を川原湯温泉駅に向かって歩いてゆく。このあたりに来ると、違和感の無い、ごく普通の田舎風景になっている。
画像はクリックすると大きめのものが別ウインドウで開きます。

 

 

このあたりは、八ッ場ダム(「やんばダム」と読む)の建設予定地である。現在の道路や鉄道などは、かなり水没してしまうらしく、大掛かりな工事を行っている。

 

 

国土交通省のページを読んでもいまいちダム建設のメリットが感じられない。というかメリットは当然あるんだろうが、これだけ大規模に環境を変えることに見合うものなのかね? 門外漢が軽々しく口を挟むのは良くないけど。

その八ッ場ダムに、1/4が水没してしまうという、吾妻渓谷に至った。紅葉の時期とか、積雪の時期なら、さぞかし美しそうなのだが、いまは落葉していて、かなり中途半端な状態である。別に積雪していないのに、杓子定規に「冬季閉鎖」で、渓谷の下部には降りられないし…。つまらない。

  

さて目的地の樽沢トンネルに至った。撮影しながら歩いて1時間強かかったのかな。

これが、この短いトンネルの存在理由の一説「トンネルの上に生えている一本松を残したかった」の松か。落葉している時期なので見分けやすい。この説が本当だとすると「戦時中の突貫工事により作られたトンネル」の割には、なかなか粋だなと思う。
ここまできて、このトンネルを列車が通過しているところを撮影しないでいるわけには行くまい。
時刻表を調べると、10分くらい待つと特急列車が通過するはず。太陽が雲に隠れてしまい、すっかり寒くなってしまった中、じっと待つ。
ガタンゴトンと音が聞こえてきたのでカメラを構えスイッチを入れると、なんとバッテリー切れでシャッターが切れない。まじかよ!と怒りと絶望に浸っている間に、ファインダーの中で列車は通過して行った。
ここまで来て、撮影しないで帰るわけにはいかない。しかし今日はうっかりサブデジカメのLX1を持ってくるのを忘れてしまっている。携帯のカメラがあるにはあるが、レンズ部分が割れているから写りは最悪なんだよな。
寒さでバッテリーの電圧が下がっているのだろうから、懐に入れて暖める。すると一応、カメラのスイッチが入る状態にはなった。シャッターは切らずにこのまま温存しておく。
次の列車が通過するのは、おそらく30分以上先である。寒いし、カメラのバッテリーも無いことだし、時間をつぶすのがたいへんだ。寒さに震えながら、金子光晴の詩集の文庫本を読む。「ニッパ椰子の唄」とか。かなりの違和感である。
さて列車が近づいてきたようだ。急いで露出をあわせ、1回だけシャッターを切る。


すっかり身体が冷え切ってしまったのだが、先ほどの特急列車と違い、趣のある国鉄車両なので、結果オーライだったわいと自分を慰める。

この写真を撮ったあとは、3枚だけ撮影できた。あとは再生すらできないほど、完璧にバッテリーが上がってしまった。


川原湯温泉駅に向かって歩いていくと、途中に蕎麦屋がある。もりそば大盛りを頼むと「これから打つので時間がかかるがよいか」とのこと。もちろんOKする。
これが僕好みの田舎っぽい蕎麦と辛めのつゆで、なかなか満足であった。しかし食べ終わったときには、上りの列車の発車時刻まで10分くらいしかない。蕎麦湯が出てくるのを待ちきれず勘定してしまう。きっと蕎麦湯もうまかっただろうに。
急ぎ足で川原湯温泉駅に着くと、発車する数10秒前だった。今回はいろいろと物足りなかったな。バッテリーはちゃんと充電しておくべしという教訓を得た。

以前に使っていた*istDは単三電池が使えるから、いざというときに購入することは比較的容易だったんだけど、今使ってるK10Dは専用電池だから、こういうときに厳しい。予備を持てばいいんだろうが、7000円近くするし…。