OK Computer / RADIOHEAD

ほんとうに超いまさらなのだが、レディオヘッドの"OK Computer"ばかりを最近聞いている。もう10年以上前に出たアルバムなのだが、「90年代後半の」「イギリスのロックで」「ナルシスティックなフロントマン」と、僕が聴かず嫌いになってしまう3要素が揃い踏みだったのだ。
適度におしゃれで適度に如才なく適度に頭のいい20代前半の若者が、自分はただのリア充じゃないんだぞと主張したいが為に支持を表明する対象となる典型的なバンド、っていうイメージを持っていた。はてなキーワードに書いてある「トム・ヨーク自身の内面に巣くう不安や絶望感を赤裸々につづった歌詞と、ネガティブな感情を昇華するメロディ」とか読んじゃうともう…顔が真っ赤になってしまう。それはまあともかく、図書館にあったのを、おっこんなのが図書館にあるんだ、まあタダだしと軽い気持ちで借りて聴いて、すっかり驚いた。

OKコンピューター

OKコンピューター

好きとか嫌いとか良いとか悪いとか以前に、自分への浸透力がとにかくすごい。浸透圧が自分に合っている。耳で聴くっていうより身体に染み込んで、すうっと溶け込んでいく。違和感なく体の中に入っていく。耳でも頭でもなくて身体全体に音楽が染み込むのがわかる。
すうっと溶け込んでいくんだけど、後味っていうか、皮膚の表面にチリチリとした、炭酸の発泡みたいな、不思議な違和感が残っていく。
たとえば"Exit Music (For A Film)"での、黎明期のサンプラーで鳴らしているような不思議なコーラスが、音程が変わるたびにリリースが不自然に途切れるたび、不思議な違和感が皮膚の一点からじわっと拡がっていく。コーラスが鳴り終わると、チリチリ感が、すうっと弱まり、ふっと消えていく。すごく不思議な感覚だ。

もちろん、好きっちゃあ好きだし、良いっちゃあよいんだけど、繰り返しになるがそれはひとまずおいといて、この不思議な浸透と後味が病みつきになって、何度も何度も飽きずに繰り返して聴いている。