Doggystyle / Snoop Doggy Dogg

PSPの音質をチェックしようではないかと考え、スヌープ・ドギー・ドッグの「ドギースタイル」のmp3を入れてみる。

Doggy Style

Doggy Style

もう10年以上、音質をチェックしようというときには、いまだにこれを使っている。豪勢なラージモニターでも、標準的なニアフィールドモニターでも、へぼいカーステレオでも、CDラジカセでも、あげくの果てにはコンビニの天井スピーカーでも、どんな再生装置でもそれなりにカッコ良さが伝わるアルバムなのだ。
こんなにどんな再生装置でもカッコ良く聴こえてしまうということは、再生装置の絶対的な能力を判定する材料としては向かないのだろうが、再生装置の特徴を判別するにはもってこいなのだ。

カッコよさの種が、さまざまな周波数帯域、トランジェント、音符に、大量に散りばめられている。
なのでどのような再生装置で聴いても、その再生装置の限界内に含まれているカッコよさの種が拾い出されて、芽が出て花が咲いて、それなりにカッコよく聴こえてくるのだ。
アレンジ的にも、ミキシング的にも、あらゆるところでそのような仕掛けが施されている。

例えば、それなりのスピーカーでは"Who am I"のやりすぎ感ただようベースが、そのやりすぎ感ゆえにカッコ良く感じるが、へぼいスピーカーでは、ベースのやりすぎ感が抑えられることによって、それなりのまとまり感がカッコ良く感じられたりする。
それなりのスピーカーでは"Pump Pump"のオープンハイハット連打と倍音の少ないファットなベースとのコントラストがカッコよく感じるが、PSPのスピーカーではオープンハイハット連打と時々鳴る高いピアノの「キン!」とのコントラストがカッコよく感じられたりする。PSPのスピーカーではこのベースは全く聞こえない。

ミキシングの正解がひとつではない。正解がひとつだけのミキシングではない。どのような環境でもその環境なりの「正解」を提案している。
あるひとつの再生環境を想定して、ベストの結果が得られるようにカッチリとチューニングすると言うのも、それはそれで正しいありようだと思うのだが、僕が感激して、尊敬して、そして打ちのめされてしまうのは、どのような環境でもベターな結果を提示できる技術とセンスのほうだ。
僕のオーディオマニア的な耳の感度が、人並みではあるだろうがたいして飛びぬけたものではない、というのも、このような技術とセンスに惹かれてしまう要因であるのは、否定できないのだけど。

さてPSPギガパックの付属ヘッドホンで聴くと、うぐっ、という感じであった。ハイハットが別の楽器になっとる。6~8Kくらいがグワっと上がっていて、10Kくらいでスパっと切れている。実況アナウンスとかだと、サ行だけがジャキッっと浮いて聴こえる。キックのアタックの情報量がほぼなくなる。しばらく使ったらちょっとはマシになるかな。
いつも使っているAKGのK271にしてみたところ、あれ、これは意外にいけるではないか。腰が弱くて音があまり前に出てこないけど、大幅に崩れたりはしていない、フツーの音だ。少なくともサ行が耳に突き刺さったりはしない。
でかいヘッドホンで目立つのは好きじゃないので、カナル型のイヤフォンで、定評のあるのを買ってみようかと思う。