日本沈没 / 一色登希彦

現在スピリッツで連載中の「日本沈没」、最初のころは、現代SF風味がうまい感じで付加されていて面白く読んでいたのだが、小野寺が次第にスーパーマン化するにつれて、読むのが辛くなってきてしまった。
日常が非日常に突然に裏返っていく過程であった連載初期では、「優秀な深海潜水艇パイロット」である(にすぎなかった)小野寺が、その裏返りの支点であり中心点として機能していたおかげで、物語の下支えができていたのだけど、いまやすっかりスーパーマンになってしまった小野寺は、もう完全に非現実的で非日常的な人物となってしまっている。いま我々が生きているこの世界と、漫画内世界との接点は、もうすっかり失われてしまった。なんだかすごくもったいない。
いまさら野球漫画に消える魔球が登場したとしても白けてしまうのと同様に、この漫画版の小野寺ほどのスーパーマンが登場しても白けてしまうのだ。良かれ悪しかれ、もう僕はこういったスーパーマンに感情移入はできなくなってしまった。